ある地方のTSUTAYAの閉店について

地元のTSUTAYAが2017年夏に閉店した、閉店の知らせは母からの電話で聞いた。

本の販売やDVD/CDのレンタルはいつかは電子書籍、映像/音楽配信サービスに淘汰されなくなっていくことは確実だろうと思っていたが、自分の地元のTSUTAYAがこんなに早く閉店するなんて思っていなかった。
 
自分はこのTSUTAYAで2014年2月〜2015年1月の1年間アルバイトとして働いた。
閉店してから閉店の理由について調べてみたが同時多発的に全国のTSUTAYAで何店舗か閉店した事がわかっただけだった。

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自分は高校卒業までこの街で過ごし、このTSUTAYAがあったおかげで様々なものから影響を受けることが出来た。
閉店してから半年、調べても誰もこのTSUTAYAがなくなったことに言及していない。
せめて自分がと思い、少し書き留める。

自分とTSUTAYAについて

90年代中頃、小学校1年生のときに隣町から引っ越してきた。
TSUTAYAは周りの市町村にもまだ少なくTSUTAYAの存在自体が珍しかった。
自分は親からお小遣いをもらうことはお正月くらいで普段自分がほしいものは申告制だった。(申告後妥当かどうか審査される)
しかし、本と映画には寛容だったのでよくTSUTAYAに行くことを親にねだりビデオを借りたり、本を買ってもらった。
 
思春期に入ると音楽に興味がでてきた、ちょうど世の中はiPodが出てきた頃。
この頃になると定期的にお小遣いをもらうようになり、そのほとんどをレンタルCDにつぎ込んだ。
邦洋ロック、J-POP、J-HIP HOP、Electronic music、棚に置いてあるものは積極的に借りて聞いた。
この頃は、「音楽に詳しいことはかっこいい」とか「誰かが良いと思ったからここにある、だから自分もいつか良いと思える」という前提で音楽を聞いていたので本当になんでも借りて聞いた。
自分の音楽に対する姿勢の礎はこの期間に築かれている。
 
大学進学と共にこの街を離れた。
 

TSUTAYAで働くことになる

 
東京で挫折し(色々なことを丸めさせてもらいますw)
地元に戻ってきた。
 
正社員で働きたい会社もなく、やりたいこともなかったのでバイトしながらゆっくり就職活動しようと思っていた。
ちょうどTSUTAYAでバイト募集していたので応募し、働くことになった。
 
映画にも音楽にもそれなりに詳しかったのでレンタルのフロアを担当していた。
このTSUTAYAは1FがCD/DVDと本の販売、2Fがレンタルフロア中規模程度の店舗。スタッフの数は店長と社員さん、ほかはアルバイトが10人に満たない人数で回していた。
バイトの給与も最低賃金よりちょっといいくらい、社員さんも給与が低いと嘆いていた。
慢性的に人手不足で店長と社員さんが働きまくっていた。それを見て絶対にここで社員にはなりたくないと思った。
 
働きはじめて業務にはすぐ慣れた。
たまにめんどくさいお客がいること以外は楽しかった。
 
働いてみてわかった事
・レンタルDVDの売上の半分以上は韓流
・旧作の在庫の調整はスタッフの一存で行われる
→無能なスタッフだと名作が在庫から消えてしまう。
・アダルトDVDを借りる年齢層は思いの外高い
→70歳以上とか全然いる。
 
約1年間働き、東京の友人から同じ会社で働かないかと誘われそこへ就職しTSUTAYAを辞めた。
自分に多大な影響を与えた作品の多くはこのTSUTAYAで出会った、1年間働いて少しは恩返しになれたかなと思う。 
 

TSUTAYAがなくなった地元 

自分はもうTSUTAYAは利用しない。
なぜなら映像はAmazon primeNetflix、音楽はspotifyitunesで十分でわざわざTSUTAYAの店舗に出向いて買ったり借りるということはまったくしていない、これからもしないだろう。
自分のような人はTSUTAYAがなくなっても困らないだろうが、この地方には困る人はまだまだたくさんいるはずだ。
TSUTAYA閉店と聞いた時、たくさんの常連の顔が思い浮かんだ。
多くは主婦や高齢者、彼らにはきっとAmazonnetflixのサービスを利用することは高いハードルに違いない。
自分が楽しみにしていた娯楽が突如なくなってしまった彼らのことを考えると胸が痛む。
 
先細りしていく業態ではあるが、確実に需要がある土地であるはずなのになぜこのタイミングでこの店が閉店してしまったのか疑問である。(周りの市町村のTSUTAYAで閉店したのはこのTSUTAYAだけ)
 
地方というのは子供にとってはとても窮屈だ、テレビで目にする情報はほとんど東京の話。
「一部地域を除く」の一部地域側の地方では新しくはじまるアニメがどうやら放送されないことをマンガ雑誌で知る、ゲームの大会は予選すら開催されていない。
子供の頃は本当に地方が嫌で嫌でしょうがなかった。
 
しかし本と映画は地方差は存在しない。
世の中共通の話題として触れられる娯楽、メディアだった。
この娯楽のハブを担っていたのがTSUTAYAだと思う。
 
デジタルネイティブ世代にとってはTSUTAYAがなくなろうが関係ないかもしれないが、高齢者やデジタルディバイドの方への影響は大きいに違いない。
 

最後に

働く場所も少ない地方都市で一緒TSUTAYAで働いていた人達が今どうしているか気になる。
元気で生活してくれていることを願います。